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認知症の母を介護する娘『認知症の母にどう接したらいいのかわかりません。つい怒って傷つけてしまいます。認知症の家族との上手なコミュニケーション方法を教えてください。』 |
こんな疑問、お悩みにお答えします。
- 認知症の高齢者と上手にコミュニケーションする10の方法
- コミュニケーションする上で注意すべき点
- 記事の内容を実践した効果について(体験談より)
認知症の祖母と8年間同居しています
この記事を書いている僕は、認知症の祖母と約8年間一緒に生活しています。(2019年4月現在)
その間、テレビで見るような、認知症の患者に特有な酷い体験もたくさんしてきました。その都度、家族と試行錯誤しながら祖母と向かい合ってきました。
病院の先生(精神科や脳外科)にも、〇〇さんは奇跡と言えるくらい、認知症の症状が進んでいない、と褒められたこともあります。
この記事の内容が、悩まれる皆さんにとって、少しでもお役に立てれば幸いです。
目次
認知症の高齢者と上手にコミュニケーションする方法の目的【家族の安心です】
この記事では認知症の高齢者と上手にコミュニケーションする10の方法をご紹介していくのですが、その目的をまず最初にお話しておきます。
なぜ認知症の高齢者と上手にコミュニケーションをとる必要があるのか、、ということです。
綺麗事なしで言うと、次のとおりです。
- 認知症の家族を安心させるため
- 介護する家族が疲弊するのを防ぐため
もちろん認知症の家族を少しでも安心させてあげる、ということも目的ではあります。ですが一番の目的は、認知症の家族を介護する家族が疲弊するのを防ぐことかもしれません。
認知症の介護を体験された方はご存知でしょうが、ハンパなく消耗します。精神的にも身体的にもです。
そのため、認知症の方との上手なコミュニケーション方法を習得していただき、少しでも認知症の方が穏やかでいる時間を増やします。
結果として、認知症の方を介護する家族も穏やかでいられるわけです。
これができないと、認知症の方は酷く荒れ、介護する家族も不眠不休となってしまうのです(経験談)。
認知症の高齢者と上手にコミュニケーションする10の方法【接し方の基本】
認知症の高齢者と上手にコミュニケーションをとる10の方法をご紹介していきます。
この記事でご紹介する方法は、僕ら家族が実際に認知症の祖母の介護をしてきて、実践していた方法になります。
最終的な目的は、認知症の方と良い関係を気づき、最後まで仲良く過ごすことです。
認知症の方の性格や病状によっては若干の違いはあるでしょうが、ある程度の効果はあると思います。
- 話しかける時は低姿勢で!同じ高さになって
- いきなり後ろから話しかけない
- 大きな声を出さない
- 威嚇しない、怒鳴らない
- 毎回が初めて。うんざりしないように
- 否定しない⇒肯定する
- 褒めてあげる
- 昔の話をする
- 特技や趣味の話題に触れる
- とにかく安心させる
認知症の家族と接する上で、上記10項目は大原則だと僕は考えます。
それでは具体的に解説していきます。
認知症との接し方1:話しかける時は低姿勢で!同じ高さになって
認知症の高齢者の方と上手にコミュニケーションをとるための方法1つ目です。
どういうことかというと、相手と同じ高さになって話すということです。相手が座っていれば、こちらも座り、立っていればこちらも立ちます。
避けたいのは、相手が座っているのに、こちらが立って話すことです。
これだと、上から目線になってしまい、どうしても高圧的な態度になってしまいます。
認知症の方、とくに高齢者はこのような態度を嫌います。ですので、場所にもよりますが、できるだけ相手の近くにより、相手と同じ高さになって会話してみましょう。
これなら簡単なので、誰でも今からすぐにできることですね。
認知症との接し方2:いきなり後ろから話しかけない
認知症の高齢者の方と上手にコミュニケーションをとるための方法2つ目です。
これは、実際に僕の祖母がそうなのですが、後ろから突然話しかけると、飛び上がったかのように驚きます。なんだか見ていて可哀想になりました。
やっぱり認知症ということもあるためか、自分の視界に入っていない人が、いきなり声をかけてくるのは怖いのかもしれません。
なので、僕は祖母に話しかけるときは、相手の視界に入ってから話しかけるようにしています。
場所によっては、相手の視界に入れない場合もあるかと思いますが、そういう場合には壁をノックするなど、何気ない小さな物音でこちらに気を引かせて、それからにしましょう。
また、相手の視界に入るときですが、1点注意していただきたいことがあります。
それは、スピーディーに動かないことです。必ずゆっくりと視界に入りましょう。
動きが速いと、相手は怯えますので。まあこれは高齢者なら誰でも一緒だと思います。
認知症との接し方3:大きな声を出さない
認知症の高齢者の方と上手にコミュニケーションをとるための方法3つ目です。
大きな声は認知症の高齢者の方を怯えさせます。
認知症の方は、症状にもよりますが、会話の中で同じことを何度も繰り返します。何回説明しても理解できないこともあります。
そうこうしているうちに、だんだんイライラしてくることも当然あります。人間なので。
ですが、だからといって大きな声を出さないようにしましょう。僕自身も、日々が闘いで、努力しています。
大きな声を出すとどうなる?
これはあくまで僕の祖母の場合ですが、ついカッとなってしまい、大きな声を出してしまうことがありました。
そんなときは、祖母もどんどんエスカレートしていき、訳の分からないことを大きな声でわめきます。
もうこうなってしまうと、なかなか収まりがつかなくなり、時間がたっておのずと落ち着くのを待つしかありません。
これはあくまで推測ですが、僕の祖母を長年見ている限りだと、祖母は常に自分が正しいと思って行動しています。どんなに間違っていてもです。
なので、そんな相手に対して声を荒げると、相手もヒートアップしてしまうのです。
認知症との接し方4:威嚇しない、怒鳴らない
認知症の高齢者の方と上手にコミュニケーションをとるための方法4つ目です。
もうこれは必ず守ってほしいポイントです。
認知症の高齢者に対して、絶対に威嚇したり、怒鳴ったりしないでください。
相手の病状にもよりますが、最悪の場合、心臓発作を起こしたり、意識を失ったり、息切れさせてしまう危険があります。
認知症の高齢者の方は怒鳴られると、もうパニックになってしまって、言動がどんどん混乱しておかしくなってしまいます。
これは、非常に危険な状態です。転倒などの二次災害につながる恐れもあります。
ですが僕たちはロボットではないので、100%やる、ということはできません。
できる限り守る、というスタンスで良いかと思います。
あまり気にしすぎるのも、かえって良くないので。
認知症との接し方5:毎回が初めて。うんざりしないように。
認知症の高齢者の方と上手にコミュニケーションをとるための方法5つ目です。
高齢者に限ったことではありませんが、認知症の方は何度も同じことを言うと思います。
認知症の方と一緒に生活されたことがあればわかると思いますが、1日に2度3度という次元の話ではありません。
1時間に10回、20回は普通です。
1日に何十回も同じことを質問されたり、話されたりすると、だんだんうんざりしてきます。これは仕方ないことです。
ですが、「またその話?」とか「もう何十回も聞いた!」とかいう態度はあまりとらないようにしましょう。
認知症の方にとっては、「今が初めて」なのです。上記のような態度をとられると、やっぱり困惑させてしまいます。
ですので、僕はこういう場合、「ああ、そうなんだね~」なんて風に軽く受け答えするようにしています。
認知症との接し方6:否定しない⇒肯定する
認知症の高齢者の方と上手にコミュニケーションをとるための方法6つ目です。
認知症の方と会話する場合には、「何を言っているんだ!」とか、「またおかしなことを」とか思うかもしれません。
ときには誤ったことを言うこともありますが、それでも否定はしない方が良いです。
否定してしまうと、余計に相手を怒らせてしまいますし、なかなか収まりがつかなくなる可能性があります。
ですので、「それは違う!」と思っても頭ごなしに否定するのではなく、できるだけ肯定してあげましょう。
認知症との接し方7:褒めてあげる
認知症の高齢者の方と上手にコミュニケーションをとるための方法7つ目です。
ここまでは認知症の方を不安にさせない、怒らせない努力について記載してきましたが、ここから先はより良い雰囲気(ムード)を作るための努力についてです。
認知症の方と会話する中で、ところどころで褒めてあげると、かなり良い雰囲気になります。
これは僕の祖母の話なのですが、ちょっと険悪なムードになりかけている場合でも、次のように褒めてあげると喜んでくれます。
- おばあちゃん、本当に肌キレイだよね
- おばあちゃん、〇〇歳に見えない!すごく若いよ!
- いっつも新聞読んでいて、凄いね。感心するよ!
僕の祖母は年の割に肌が綺麗なので、よく上のように褒めてあげています。
そうすると、「あら、そう?」なんて風に、昔の祖母に戻ったかのように喜んでくれます。
それがまた僕も嬉しいので、また褒めてみよう!なんて気分になります。
何を言われると喜ぶのか、人によっては様々ですが、認知症の方を落ち着かせ、安心させてあげるためには、時々褒めてあげると効果的です。
認知症との接し方8:昔の話をする
認知症の高齢者の方と上手にコミュニケーションをとるための方法8つ目です。
認知症の方は、最近のことを記憶することが困難ですが、昔のことは比較的覚えています。
ですので、まだ若かった頃の話や、元気だった頃の話をしてあげましょう。きっと活き活きして話してくれると思います。
これは僕の母がよく使っている方法なのですが、母が小さく祖母と同棲していた頃の話や、古びたアパートの話、苦労した話、祖母が怖かった時の話など、よく昔語りをしています。
認知症との接し方9:特技や趣味の話題に触れる
認知症の高齢者の方と上手にコミュニケーションをとるための方法9つ目です。
誰でもそうだと思いますが、自分の趣味や特技の話題に触れてもらえると、嬉しいですよね。
認知症の方も、まだ元気だった頃の趣味や特技の話題に触れてあげると、とても喜ぶと思います。
一緒にやれることなら、家族でやってみるのも脳への良い刺激になるかもしれません。
僕の祖母は若いころにダンスを習っていたそうです。
なので、母はたまに祖母に対して、「お母さん、またダンス教えてよ!」「一緒に踊ろ!」という風に祖母に話しています。
祖母も喜んで一緒に踊ってくれます。
普段運動できないので、ダンスすることで若干の運動になるため、一石二鳥です。
認知症との接し方10:とにかく安心させる
認知症の高齢者の方と上手にコミュニケーションをとるための方法の最後です。
最後です。
認知症の方に対しては、とにかく安心・安らぎを与えましょう。
これは認知症になってみないと誰にもわかりませんが、きっと認知症の方にとって、毎日が不安や苛立ち、寂しさで一杯だと思います。
長年祖母を見てきて、そのように感じています。
祖母はよく「憂鬱なの・・・」と話していたのを思い出します。
そんな状態で不安になるような出来事があると、どうでしょうか?
健全な私たちであっても、毎日がとても生きづらくなるはずです。
そのため、とにかく認知症の方に対しては、安心させてあげるようにしましょう。
ここまでご説明してきた内容を意識しつつ、他でもない家族が支えになってあげましょう。
認知症の高齢者とコミュニケーションをとる上での注意点
認知症の高齢者の方とコミュニケーションをとる上で、最低限注意しておきたい点を以下にまとめます。
- 不安にさせない
- 口論しない
- 一緒にいる時間を多くとる
とりあえず、僕の家で気を付けているのは上記の3点です。他にもいろいろあると思いますが、とくに大切だと思っている点を挙げてみました。
認知症の高齢者を不安にさせない
不安にさせないというのは、ここまでご説明してきたとおりです。とにかく安心させてあげるように工夫してみましょう。
定期的に様子を確認したり、体調や気分を聞いたりしながらコミュニケーションを欠かさないようにすることが大事です。
認知症の高齢者と口論しない
あと、口論しないことも重要です。
認知症の方と会話していると、ところどころで記憶が本人に都合の良いように変わっていたり、間違っていたりすることがあります。
ですが、それを正そうとムキになったり、理屈で攻めたり、論理的に攻めたりすることは決してしないようにしましょう。
僕の経験上、祖母に対して明らかに間違った記憶を正そうと何度もしましたが、結局わかりあえませんでした。当然のことです。認知症になった今となっては。
なので、そもそも認知症の方を相手に口論したり、議論したりすること自体が誤りであると、僕は思っています。あくまで僕の見解です。
なので、今では口論にならないように、祖母の揚げ足をとったり、否定することはしないように、すべて肯定しています。
それで気分を変えてあげて、別の楽しい話に誘導し、笑ってもらえればそれでいいと考えているためです。
認知症の高齢者と一緒にいる時間を多くとる
最後に、認知症の方と一緒にいる時間をなるべく多くとるようにしましょう。
見ていない間に何をするかわからないから、という理由もありますが、やっぱり一番は安心させるためです。
一緒に映画やドラマを見たり、昔話をしたり、アルバムを見たりと、なんでも構いません。とにかく、認知症の方を離れた部屋で一人ぼっちにさせるのだけは、あまりお勧めできません。

我が家では、リビングに祖母のお気に入りの椅子を置き、テレビを付けてそこに座らせています。一緒にいる時間が多い方が、やっぱり祖母も穏やかでいます。
認知症の祖母とコミュニケーション重ねてきた効果は?
さて、ここまで僕ら家族が認知症の祖母に対して気を付けていることをお伝えしてきました。
人によって性格も異なれば、病状も違いますが、同じ人間である以上、この記事でお伝えした内容はある程度の効果を発揮すると思います。
僕の祖母は、最近では穏やかでいる時間が多くなってきました。
母も祖母も韓流ドラマが好きらしく、リビングでDVDを流しておくと、2人で大人しく見ています。そんな時間が、とっても穏やかで安心できます。
母も最近は祖母と同じ部屋で過ごす時間がとても増えたように思います。ちなみに、祖母と同棲して約8年近く経ちます。(2019年4月現在)
同棲した頃は、今よりずっと認知症の症状が酷かったように思います。いつも何かをずっと探していたり、家族を泥棒よばわりしたり、夜も寝ずにドタバタやっていました。
それを思うと、8年も経って、当然認知症も進行している?はずなのに、逆に穏やかになっているということは、この記事でお伝えした内容が功を奏したということだと考えています。
まとめ
認知症の高齢者の方とコミュニケーションをとる上で、注意してほしいこと、試してみてほしいことをお伝えしてきました。とにかくこの8年で僕が学んだことは、認知症の方を不安にさせてはいけない、ということです。
1日の中で、より長い時間を穏やかでいてもらうためにはどうすれば良いのか、毎日が試行錯誤です。ですが、介護する私たちの体も大切なので、無理はしないでくださいね。